馬にもさまざまな癖があり、なかでも体調に悪影響を与えるような癖を悪癖と呼んでいます。

今回は悪癖の中でも、よくみられる熊癖(ゆうへき)に焦点を当てていきます。

熊癖をすると馬にどんな影響があるのか、やめさせるにはどうしたらいいのかについてご紹介します。

この記事で分かること

・熊癖とは
・熊癖をしてしまう理由
・熊癖の馬体への影響
・熊癖をやめさせるには?

熊癖(ゆうへき)とは?

馬房で体をゆさゆさと揺らしている馬を見たことがありますか。

あれが熊癖(ゆうへき)です。
前肢を開き気味にして、左右を踏みかえて体を揺らします。

この様子が舟を漕いでいるのに似ていることから「ふなゆすり」と呼ぶ人もいるのだとか。

動物園の熊がオリの中で、体を揺らしているのをみたことはありませんか。
馬の「熊癖」はあの熊の動きが名前の由来になっているそうです。

熊癖をしてしまう理由

 

それでは、馬はどんなときに熊癖をしてしまうのでしょうか。

よく言われているのは「暇だから」。

これは棒状のものに前歯を押し付けて空気を吸い込む悪癖である「さく癖」にも同様のことが言えます。

確かに長い間、馬房に入っていたら、暇だから何かをしようとする気持ちは理解できますよね。

また、熊癖に限らず、癖は他の馬がやっていたのを見て真似をすることが多くあるそう。

他の馬がやっているのをみると「楽しそう」と思うようです。
見ようによっては踊っているようにも見えなくもないですからね。

馬を扱っている方には、熊癖をしていても体に悪影響がなければ、あまり気にしない方も多いようです。
逆にいつも熊癖をしている馬が突然、熊癖を止めてしまう方がドキっとするとのこと。

気を付けなくてはならないのは、ストレスを感じて熊癖を行っている場合です。

普段は熊癖をしないのに、環境が変わったタイミングなどで突然熊癖を始める馬は気をつけておきましょう。

競走馬のセリでは、悪癖を事前に公表しなくてはなりません。

若い上場馬の場合、当日、見慣れない会場でのストレスで熊癖を始めてしまう馬もいるようで、当日に悪癖を公表することがまれにあります。

こういった馬は普段からも少し繊細なところがあるのかもしれません。

馬の体への影響は?

 

多くの場合、体に大きな影響はないようです。

しかしながら、前肢の左右を踏みかえながら体を揺らすため、前肢に負担がかかりやすくなります。

そのため、もともと前肢や蹄に問題があると、熊癖をすることによって症状が出やすくなることもあるようです。

蹄も減りやすくなりますので、装蹄師にも熊癖があることを伝えておくといいかもしれません。

また、ごくまれではありますが、肢勢や蹄の形に影響することもあるため、熊癖は歓迎されません。

熊癖をやめさせる方法とは

 

まずは原因が何なのか把握することが大切です。

暇つぶしで熊癖をしてしまうのであれば、できるだけ馬に暇だと思わせない状況を作ってあげましょう。

簡単にできるのは、放牧の時間を延ばして馬房に入れている時間を短くしてあげること。

これで熊癖がなくなったり軽くなったりするのであれば、単純に暇つぶしとして熊癖をしているのかもしれません。

 

馬用のおもちゃも効果的と言われています。

ただし、必ず馬用のおもちゃを使用してください。
人間のものだと簡単に破壊して飲み込んでしまう場合があるためです。

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ストレスを感じてしまっている場合はそのストレスの原因を取り除いてあげる必要があるでしょう。

新しい環境から移動してきたばかりの馬なら、時間が経って慣れてくれば問題なくなることもあります。

馬房で孤独を感じてしまうような馬には他の馬が見えるように馬房の環境を整えてあげることもいいかもしれません。

ただ、隣の馬が熊癖を真似してしまう可能性もあるので、難しいところではあります…。

熊癖をしていて体に悪影響がない場合は無理にやめさせようとしなくてもいいのかもしれません。

海外の研究では、普段さく癖をする馬がさく癖をしなかった場合、さらにストレスが高まったと考えられる結果が出ています。

そのため、さく癖を行っていた馬に対して、さく癖をやめさせようとすると余計にストレスが高まると考えられています。

さく癖と熊癖で多少の違いはあるかもしれませんが、同じようにストレスが高まる可能性も。
体に害がない程度であれば、癖を個性としてとらえてあげてもいいかもしれません。

馬の恐怖症の克服に取り組んだ研究の中で、動物行動学者は人間が問題を持つ馬と同じ状況に置かれたときに、我慢できるのかを考えることが重要だと記していました。

つまり熊癖のケースで言えば、馬房のような何もない狭い部屋に人間が入れられて、何もせずにじっとしていられるか、ということを配慮すべきだということになります。

そう考えてみると、熊癖を覚えさせないための有効な手だても、おのずと見えてくるかもしれません。

まとめ

 

今回は、熊癖について調べてみました。

さく癖や旋回癖などとくらべて、体に悪影響の出るリスクは低いようです。
体に影響がないのであれば、あまり気にしない方も多いようですよ。

体調にも影響が出てきてしまっている場合には、原因を見つけて、その原因を取り除いてあげましょう。

しかし、一番いいのは馬に悪癖を覚えさせないこと。

人間同様、一度覚えた癖を矯正するのは困難です。
できるだけ放牧時間を長くしたり、馬房の中も退屈しないような工夫をしたりして、環境を整えてあげましょう。